~在宅医療を推進するために~
◆ 在宅医療を推進するために、2010 年より柏市医師会と柏市が東大高齢社会総合研究機構と共に取り組んできました。
◆柏市医師会 在宅プライマリーケア委員会は、主治医―副主治医制度をバックアップすると共に学生の地域臨床実習受け入れや市民啓発等、在宅医療を推進しています。
◆在宅医療推進のためには、医療と介護に関する多職種の連携が必要であり『顔の見える関係会議』を概ね年に4 回、2012 年6 月から23 回開催。
◆在宅医療を含めた柏市の地域医療を支える拠点として『柏地域医療連携センター』が2014 年4月に本格稼働しました。
1.柏プロジェクトの概要
- 医師会をはじめ医療・介護にかかわる各職能団体の代表が豊四季台地域高齢社会総合研究機構の部会である在宅医療委員会(医療ワーキンググループ、連携ワーキンググループ、試行ワーキンググループ等)に参加(図1)。
- 同年5 月に第1 回目の医療ワーキンググループが開催され、医師会と柏市で在宅医療の推進方策に関して議論した。
- 同年6 月には在宅医療に関し第1 回目の勉強会が開催された。(図2)。
- 当時は、柏市内の在宅支援診療所は9 施設と少なく、在宅診療は近隣市からの訪問医に頼ることも多かった。いかにして市内の在宅医療の担い手を増やすかが問題であり、在宅医療が拡がらない理由をさぐり、在宅医療を推進するためにどうするかを話し合った。
- 2010 年7 月、柏市と医師会をはじめ歯科医師会、薬剤師会、病院関係者、訪問看護ステーション連絡会、介護支援専門員協議会、地域包括支援センター等の各職能団体の代表者が在宅医療・介護の大まかな方向性について議論するため、連携ワーキンググループが立ち上げられた。
- 医療・連携ワーキンググループの中で、在宅医療を推進するためには、1.在宅医負担軽減のためのシステムとして主治医―副主治医制度 2.病院のバックアップ体制の確保 3.医療と介護にかかわる多職種の連携(顔の見える関係会議) 4.在宅医療の担い手を増やすための研修(東京大学高齢社会総合研究機構事業) 5.情報共有システムの構築(東京大学高齢社会総合研究機構事業) 6.市民啓発が必要である等の議論がなされた。
- 2013 年3 月17 日には第1 回「日本医師会在宅医療支援フォーラム」が日医会館大講堂で開催され、柏プロジェクトに関して金江会長が柏市長とともに基調講演をされた。
2.主治医・副主治医制度と在宅プライマリーケア委員会
- 在宅医療の担い手を増やすためには、在宅主治医の負担軽減が必須であり長崎Dr.ネットを参考に副主治医制度を構築。
- 副主治医は柏市医師会 在宅プライマリーケア委員会の中で、1)機能強化型在宅療養支援診療所の医師 2)エリア的に対応が可能な委員会の医師のいずれかが主治医の依頼により対応する。
- 万一、副主治医が見つからない場合は委員会がバックアップする。
- 1 つの診療所が数多くの在宅患者を支えるだけでなく、多くのかかりつけ医が少しづつ患者を支えるシステム構築を目指す。(図3)
3.病院のバックアップ体制の確保
- 在宅療養患者の急変時に対応するため、病院のバックアップ体制の確保が必要である。
- 柏市内の救急告示9 病院と国立がんセンター東病院にて構成される「10 病院地域連携会議」を構成し、急変時のバックアップ体制について、2013 年6 月に概ねの方向性を見出せた。
4.医療と介護にかかわる多職種の連携
- 多職種が一堂に会し、ワークショップを通じて、顔の見える関係づくりを推進し、連携体制を構築することにより、効果的な医療・看護・介護サービスの提供を目指す。(参加者構成は図4)
- 概ね年4 回の会議を実施。
- 多職種間の構造的なギャップを乗り越えてコミュニケーションを深める場が必要。
- 会を進行するために、ファシリテータを準備(ファシリテータとはメンバーの参加を促しグループを導き、作業を容易にする人のこと。)
- 2012 年6 月から2018 年2 月まで計23 回開催(図5)。顔の見える関係会議開催に際してはファシリテータをお願いする参加者に地域医療推進課から声掛けをして事前打ち合わせを行った。
- 振り返り発表として1 班90 秒の持ち時間で全15 班が発表する。
- 参加者の感想は「各職種と話ができて大変良かった。」、「それぞれの立場で見方が違うことをあらためて知ることができた。」という意見が出された。
- 顔の見える関係会議に参加して、「連携する機会が増えた。」、「多職種と連携が取りやすくなっ た。」などの感想があり、役立ったとの回答する人が平均90%であった。
- 在宅医療推進多職種連携研修会の試行プログラムが2011年の5 月から半年間、開催された。医師会員6 名、および在宅療養にかかわる歯科医師、薬剤師、訪問看護師、介護支援専門員、病院ソーシャル・ワーカーの各団体から推薦された多職種24 名、計30 名が参加した。当初は8.0 日の研修期間であったが、2012 年以降は2.5 日に短縮され、2018 年までに10 回開催された。研修プログラムは在宅医療で遭遇することの多い“認知症”と“がん緩和ケア”を中心に、褥瘡、口腔ケア、特区における訪問リハビリテーション、診療報酬や多職種連携の必要性をテーマとして取り上げ、座学とグループワークで行われる。
5.情報共有システムの構築(東京大学高齢社会総合研究機構事業)
- 在宅療養ではサービスを提供される場が患者の自宅であり、在宅療養にかかわる多職種がリアルタイムに情報共有することは難しい。そこでクラウドコンピューティングシステムを利用し、タブレット端末やスマートフォンを使用し、担当する患者の情報を把握できるシステムを開発。
- 2013 年11 月までに51 例の試行運用をし、患者基本情報、アセスメント、バイタル、食事や排泄等の身体情報など情報共有している。
- 2018 年3 月末現在利用者数は1,336 名、施設登録数370 事業所である。
6.柏地域医療連携センター
- 2014 年3 月には豊四季台団地の中央に地域包括ケアシステムの要ともいえる「柏地域医療連携センター」が開所し、地域医療の推進と多職種連携の拠点として稼働した。
- このセンターは患者が病院から在宅医療に移行する際に、在宅医療チームのコーディネートをする。
- 連携ワーキンググループにて議論を積み重ね具体の症例をもとにガイドブックを作製した。(図6)
在宅プライマリケア委員会&訪看連絡会合同勉強会
平成26 年より、柏市医師会在宅プライマリケア委員会と柏市訪問看護ステーション連絡会が合同で勉強会を行っています。この会では、在宅医療に携わる医師と訪問看護師が、在宅医療に必要な知識や技術を一緒に学び、柏市における在宅医療、訪問看護の質を維持、向上していくことを目標としています。さらに終了後は毎回懇親会を行い、お互いに顔が見える関係、相談しやすい関係づくりを目指しています。
現在までに合計8 回開催されました。第2回、第4回では、在宅の現場でよく遭遇する排便の問題、尿道カテーテルの問題について医師看護師間で共通の理解を深めました。また、第3 回、7回では外部から講師を招いて講演会を行いました。第6 回は持続皮下注用機器(CADD ポンプ)の取り扱いを学ぶため、実際にデモ機を10 台使用しハンズオンセミナーを行いました。
毎回、医師は10‒20 名、看護師は30‒70 名が参加しています。各回ともアンケート結果では90%以上が参加してよかったとの意見をいただいています。今後も年に2回継続して開催していく予定です。
第1 回テーマ「事業所紹介等」
第2 回テーマ「①訪問看護指示書について②排便コントロール」
第3 回テーマ「これだけは押さえておきたいがんの痛みの治療法」
第4 回テーマ「尿道カテーテル 柏ルール作り」
第5 回テーマ「在宅看取り」
第6 回テーマ「CADD ポンプ ハンズオンセミナー」
第7 回テーマ「先進地区の事例検討」
第8 回テーマ「経鼻胃管」